あきらめる? その養育費
厚生労働省による平成28年の調査によると養育費の一般的な相場は母子家庭では43,707円、父子家庭では32,550円との結果です。この金額が多いか少ないかはさておき、”養育費をもらっていますか?”、”現在も滞りなく養育費をもらえていますか?”が今回のテーマです。
先の調査によると約5割以上が養育費を受け取る約束をしておらず、約束をしている4割強のうちの約14%が何らかの理由で受け取ることができなくなっています。
つまり安定的、継続的に養育費を受け取っているは一人親の中でたった25%程度、4人に1人ということです。
諸外国と比較して養育費の受給率の低さ、支払わせるための施策の甘さ等を改善するため、下記の法改正や最高裁判所による養育費算定表の改定が行われました。
①養育費の一部に未払いがあったとき、その後に支払期限が来る将来養育費の支払いについての債権も差押えができます。
②養育費に関しては給与の1/2まで差押えができます(一般債権は1/4)。
③養育費に関する取り決めを公正証書で書面にしていた場合、市町村や日本年金機構、法務局、銀行等の金融機関等の第三者に対して債務者(養育費を支払う義務のある元パートナー、非監護親)への財産開示請求が可能となりました(令和2年民事執行法改正)。
③については債務者本人に財産開示請求することも可能であり、この請求を拒んだり、自分の財産を隠そうとした場合の罰則が強化されました(令和2年民事執行法改正→刑事罰新設)のでより養育費を払ってもらえる環境が整ってきたと言えるでしょう。
当然ながら支払期日から遅延していればその遅延損害金もプラスして請求することができます(一般的には年利3%)。
そもそも養育費とは何か?
養育費はその名の通り、子どもの成長、養育のための費用であり、民法上離婚後であっても養育は親であれば当然の義務です。
母子家庭、父子家庭となる場合にはまず養育費の取り決めをしましょう。
その際の取り決めを約した文書は、必ず高い証拠能力と執行力を持った公正証書にしてください。
両親にとって養育は法律で定められた義務ではありますが、先の統計によると4人に3人が養育費をもらっていない現状です。
「もう関わりを持ちたくない」「どうせ払ってくれない」「いつの間にか払込みがなくなった」等、理由は様々かと思います。
ですが結果、一番困る、のちのち深刻な問題となってしまうのは養育の当事者である子ども達です。
金額はいくらであっても構いません。取り決めた内容はしっかりと書面に残しましょう。
実際のところ、将来何が起こるかわかりませんし、日々の養育環境を整えるため、万が一の時の備えとして養育費の取り決めは(いまからでも)必ずやっておきましょう。
また払込みが滞った場合であっても状況に応じて支払いを促す、強制的な手段を執る等で支払い義務を履行してもらいましょう。
そのための公正証書の作成費用については補助してくれる都道府県(下記)もありますし、民間の養育費保証の制度(自治体による保証料の一部補助)もあります。
諸外国では滞った養育費の請求権を国が譲渡を受けてその養育費を国が支払い、国が支払い義務者から養育費を回収するという制度事例もあるようです。
日本国内でも今後どのような施策が講じられるのか期待されるところですが、あきらめずに現状で可能な限りの対策を施しておきましょう。
北海道、秋田、宮城、福島、新潟、群馬、栃木、埼玉、東京、千葉、神奈川、静岡、愛知、三重、滋賀、和歌山、京都、大阪、兵庫、岡山、香川、徳島、福岡、佐賀、宮崎、沖縄(お住まいの各市町村における施策の有無、内容等の詳細については各自お調べください)