【銀行物語(その3)】銀行はどんな取引先を好むのか?

 金融の仕組みはユダヤ人が考えたものだと言われていますが、一般の企業と比べてその収益構造は一風変わっています。銀行は支店がそれぞれ独立採算制を採っています。

 銀行の場合、一般企業における商品の仕入れにあたるものがお客様からの預金であり、いわゆる販売するものは顧客に対する融資と言っていいでしょう。
 この時に仕入れ(預金)が足りない、融資先が見つからない(販売先がなく在庫過多)といった場合、銀行は本部から資金を借り入れてそれを貸付け(顧客に融資)、逆に集めた資金を本部に貸し付けることで本部は仕入の足りない融資過多で資金量が少ない他支店に貸付けることとなります。これらの収益が支店の儲けとなるわけです。
 その他にも銀行は、本体の収益として有価証券や外貨等の運用も含めた様々な収入源を持っています。
 銀行はこのように日々、収支の管理をして遊んでいる”お金”を残さない、寝かせておかない、を徹底しています。

 ここまでのように、銀行としてもバランスの取れた経営が、収支の好適なバランス、盤石な基盤、大きな利益をもたらしているわけですが、これは一般企業にも同じ事であり、銀行の取引先であるお客様についてもこのバランスを求めています。
 とはいえ銀行側が直接的に面と向かって「バランスの良い取引をしてください」と要求してくることはないわけで、かつ始めから狙って銀行との取引だけを考えてビジネスを展開することはなく、結果的にそのような取引の形態となった場合は”ラッキー”ということになるのだと思います。
 このラッキー状態の究極が、預金と融資が同額でバランスが取れている状態ということです。

 銀行側の立場に立って欲を言うならば、この場合の融資は信用保証協会等、なんらかの保証付の融資であること、もしくは不動産等の担保が100%以上付されていることであり、この状態であればなお優良で好まれるお客様ということになります。
 銀行にとっては預金でも融資でも両方から収益をもたらしてくれ、またリスクを妊む融資も保全が取れている、つまり不良債権になったとしても回収することが容易であることから、何ら心配なく安心して取引を継続する事ができる優良顧客と見てくれます。
 翻ってこちら側の顧客サイドからいえば、融資と預金残高が同額かそれ以上確保されているということはいつでも融資金の返済は可能であるとも言えます。

 ビジネスの都合上、預金残高は減らせない、確保しておきたいのは当然ですがこれはあくまで数字上の見え方の問題です。
 優良顧客が①自行預金残高を使って、②融資を全額返済、③担保もなくなる、④信用保証協会の融資残高も減る、という結果は担当者としても、支店としても、ひいては銀行全体としてもとても大きな評価のマイナスであり、収益源の損失につながります。

 みなさんがもし複数の銀行と取引があり、預金が分散しているのであれば一度、メインバンクにその預金を移して、銀行にとってバランスの取れた優良顧客となり、金利の引き下げや、その他のビジネス展開について今まで以上の銀行との関係性を模索、構築していくことを打診してみてはいかがでしょう。

 バランスの取れた好まれる取引先となったみなさんのことを銀行は取引先としてどのように見ているか、また今後どのようなお付き合いをしていきたいと思っているのかを垣間見ることができるかもしれません。