波風立てないフリーランスの債権回収

 フリーランス協会のアンケート調査では回答者の約7割が報酬の未払いを経験し、4割強が泣き寝入りをしています。
 取引先の事情を確認、理解して、納得済みで未回収状態になっているのであればそれはそれ、経営判断として妥当だと思いますがそうでない場合はどのような手段をもって行動、回収に動くのがベターなのでしょうか。
 まずは、なぜ支払いをしてくれないのかを考えてみましょう。

①「手違い等で単に入金が遅れている、忘れている。」(→払いたい)
②「支払い能力が低下している。」(→払いたいが払えない)
③「詐欺等で故意や悪意がある。」(→払いたくない)

 考えられるパターンはだいたいこの3つですがそれぞれのケースで対応が変わってきます。
 ③のケースは①②の任意回収と比べてほとんどの場合が法的回収になってくるでしょう。
 また②でも取引先の破綻となれば法的回収は避けられませんが、今回は裁判所を通さず、なるべく波風を立てないで自己完結できる、低廉な任意の回収を考えます。

 まず①への対応

  • 電話やメール等で確認、簡単な督促をする。
  • 同時に次回請求までに支払い期日や契約内容に沿った条件等が明記された新しい請求書に変更しておく。
  • これを機会に支払いに関する担当者、ご自分の取引の担当者を明確にしておく。

 ②のケースは日頃からその兆候を察知、正確な情報を収集して状況を把握することが大事ですが、同じくらい債権回収に関する基礎的な知識の蓄積が必要となります。
a.内容証明を送付して支払いを促す。
b.自身に当該取引先に債務があれば当該債権と相殺する。
c.取引先と連絡が取れる、担当者と話ができる場合は他社の債権を譲渡してもらう、他の財産により代物弁済してもらう等を交渉する。
d.cの相手先と交渉ができる場合では、当該遅延している債権の支払い方法を改めて協議、決定してその内容を強制執行が可能となる公正証書で新たな契約書を取り交わす。

 これら①②ケースはどれも初動が肝心です。
 つまり、先に申しあげた通り、情報収集、状況の把握、対策を練って対応する、をできるだけ早期に動き始め、迅速に行動するということです。
 早期解決、容易に回収するためには日頃から取引先の変化に対してアンテナを高く、嗅覚を鋭くしておくことです。
 要注意な取引先の変化は以下のような例です。

  • 担当者がコロコロ変わる。
  • 過去数ヶ月の支払いが遅れがち。
  • 支払い条件変更の依頼があった。
  • 経営者が不在がち。
  • 悪いウワサ(案外これが一番確度が高かったりします。)。

 他に防衛策として以下も検討しておきましょう。

  • ファクタリング会社や回収不能となった時に備えて保険等を契約しておく。
  • 報酬はなるべく分けて回収できるような支払条件にしておく。
  • 信用調査会社等を利用して取引先の財務内容等を把握しておく(取引銀行、取引先もここで調べることができます)。

 

 債権回収はビジネスには付きもの、避けられないビジネス上の出来事ではありますが、なるべく減らす、できるだけ起こらないようにするために日頃からの自衛手段への取り組みが必須です。
 なぜなら債権回収への対応はストレスが大きく、時間や大事な売上が奪われてしまうだけでなく、結果として取引先を失うこともある等、債権回収自体はビジネス的には何もメリットを産まないからです。
 最悪の場合、割かれる時間、かかるコスト、手間、精神的ストレス等を勘案して前向きな“なき寝入り”(回収を諦める)も検討しましょう(貸倒損失として損金参入)。

 極論をいえば債権回収はほとんどの場合が早い者勝ちです。
 もっといえば債権の回収は法的回収に至る前に波風立てず、他の債権者よりも早く、誰よりも先に回収しましょう。
 そのためにはスピード感を持って対処することをオススメします。